2018年11月9日金曜日

神武と戦争

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紀元節
2年修身の「天皇陛下」につづくのが「キゲン節」で、第1代天皇の即位を記念する日、と説明される。記紀の記述に基づくものであるが、神武の存在それ自体の信憑性が問題であるうえ、紀元節を設定した明治6(1873)年当時の学問的水準からみて、日本書紀の記す月日―辛酉年春正月庚辰朔を太陽暦に換算することは不可能であったとされる。しかし明治政府は、2月11日を万世一系の天皇統治を記念する日として、大日本帝国憲法発布をこの日に重ねたのをはじめ、御真影の下賜、金鵄勲章など、天皇への権力集中をはかる政策をこの日と関連させてきた。
 昭和において、特に紀元2600のこの日を選んで、朝鮮における「創氏改名」、台湾における「改氏名」受付けの第1日としたのは前述のとおりです。太平洋戦争においても、緒戦の作戦の鍵とされたシンガポール占領の日を、2月11日に想定していたという。

神武天皇と金の鵄(とび)
文部省はこの祝日を重視し、第2学年の修身教科書では、神武天皇とその弓の先にとまって光を放つ金の鵄の口絵を掲げた(図18)。文章の基本は前期と大差ないが、「天皇ハ、ゴジブンデ ミイクサビトヲ オツレニナッテ、イクサノ 苦シミヲ ゴイッショニ ナサイマシタ。ミイクサビトハ、天皇ノオンタメニ 命ヲササゲ、ミヲステテ ツカエマシタ」(「キゲン節」)という国民学校ならではの数行の加筆がみられる。

 私たちは、今度 みんな揃って、3年生になります。-中略―
 私たちは、先生から いろいろな お話を 聞きました。
 天皇陛下の ありがたいことが わかりました。
 天皇陛下をいただく 日本の国は、世界中で
 いちばんとうとい国であることを知りました。
 私たちは、天皇陛下に忠義を尽くし、この よい国を、
 みんなで いっそう よい国に しなければならないと 思います。

 これが1年間にわたって3代の天皇について学んだ「私たち」に教科書上の明確な文章としてではなく、先生の
「オ話」を隠れ蓑として国家が刷り込んだ説明抜きの教育の結論であった。


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