2009年1月17日土曜日

1938年 南京 1月17日

「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より
1月17日
 ローゼンと話し合いをしたとき、すでに岡崎総領事は先日のいさかいの調停に乗り出していた。ベルリンや東京が何も言ってこなければ、一件落着となる。そうなれば大変ありがたい。とにかく日本人と折り合っていかなければならないのだから。
 昨日の午後、ローゼンと一緒にかなり長い間市内をまわった。すっかり気が滅入ってしまった。日本軍はなんというひどい破壊の仕方をしたのだろう。あまりのことに言葉もない。近いうちにこの街が息を吹き返す見込みはあるまい。かつての目抜き通り、イルミネーションなら上海の南京路にひけをとらないと、南京っ子の自慢の種だった大平路は、あとかたもなく壊され、焼き払われてしまった。無傷の家など一軒もない。見渡すかぎり廃墟が広がるだけ。大きな市が立ち、茶店が建ち並んでいた繁華街夫子廟もめちゃめちゃで見る影もない。瓦礫、また瓦礫だ!いったい誰が元通りにするというんだ!
帰り道、国立劇場と市場の焼け跡によってみた。ここもなにもかもすっかり焼け落ちていた。南京の三分の一が焼き払われたと書いたが、あれはひどい思い違いだったのではないだろうか。まだ十分調べていない東部も同じような状態だとすると、三分の一どころか半分が廃墟と化したと言ってよいだろう。
 日本軍は安全区から出るようにとくり返し言っているが、私は逆にどんどん人が増えているような気がする。上海路の混雑ときたら、まさに殺人的だ。・・・・・・・・・・
 難民の数は今や約25万人と見積もられている。増えた5万人は廃墟になったところに住んでいた人たちだ。彼らは、どこに行ったらいいのかわからないのだ。



「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店)より
1月17日  月曜日
 今日は雨が降っている。大きな恵みであった日照りは、私たちを見捨ててしまった。ベッドが泥で汚れている。ぜひ建物をのぞいてもらいたいものだ。
 警備兵だけでなく大使館の警官も校門に立たなくなってから幾晩か過ぎた。先週の土曜日、このことを日本大使館に報告したが、何の措置もとってくれない。安全区で見かける兵士はそれほど多くない。残念なことに、中国の警察は、今ではほとんど無力だ。
 午前中を無為に過ごした。創造的エネルギーは全く残っていない。しなければならないことは山ほどあるが、どうにもやる気が出てこない。
 午後2時、アメリカ聖公会の奉仕者たちに手伝ってもらって連続集会を始めた。・・・・・・・


 今夜は、南の方角ーたぶん、南門の外側ーに立ち込めるものすごい煙を眺めていた。闇夜の空は、時々炎で赤く輝いている。破壊は依然としてやまない。南京がどの程度破壊をまぬがれるかは、兵士や民衆による略奪がいつやむかに懸かっている。避難民たちは帰宅するようしきりに促されているが、どうして帰宅する勇気など出ようか。比較的に年齢の高い女性たちは、徐々に帰宅しているが、若い女性たちは帰らない。
 今日はキャンパスに日本兵は来なかった。メリーとフォスター氏は城南に出かけ、外国人墓地にも立ち寄った。・・・・・・2人が通った通りの中では、太平路が最も徹底して無残に破壊されているようだ。
 一ヶ月前の今夜、12人の少女がキャンパスから連れ去られた。あの夜の恐怖をはたして忘れることができるのだろうか。


「Imagine 9」解説【合同出版】より



 武器を使わせない世界


 世界中の兵器をいっぺんになくすことはできません。それでも人類は、二つの世界大戦を通じて国際法をつくり、残酷で非人道的な兵器の禁止を定めてきました。
 たとえば、地雷は、踏むと反応する爆弾で、人を殺さず手や足だけ奪う兵器です。NGOが運動を起こし、カナダ政府と協力して、1997年に「対人地雷全面禁止条約」を実現しました(オタワ条約)。
 また『クラスター爆弾」は、爆発すると周辺一帯に大量の「小さい爆弾」が飛び散るようにつくられた爆弾です。あたり一帯に不発弾が残り、地雷と同じ働きをします。クラスター爆弾も全面的に禁止するべきだと、ノルウェー政府とNGOが動き始めています。

 広島と長崎に落とされた2発の原爆は、瞬時に20万人の命を奪いました。被爆者たちは、60年以上たった今も、放射能によって健康をむしばまれています。
 このような核兵器が、世界に26,000発もあります。その大部分はアメリカとロシアのものです。核保有国は「自分たちの核兵器は許されるが、ほかの国が核兵器をもつのは許さない」と言います。アメリカは自ら核兵器の強化を図っているのに、イランや北朝鮮の核開発には制裁を課し、イラクに対しては「核疑惑」を理由に戦争を始めました。
 いわば「タバコをくわえながら『みんなタバコをやめろ』といっているようなもの」(エルバラダイ国際原子力機関事務局長、ノーベル平和賞受賞者)です。自分たちの核はいいのだと大国が言い続けている限り、ほかの国々もそれに続こうとするでしょう。



第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。



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