2009年2月5日木曜日

1938年 南京 2月5日

「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より
2月5日
 強姦などの暴行は、2月1日から2月3日までのたった三日間でまたもや98件もあった。さいわいわが家の収容所では、今日も問題は起きなかった。けれども、事態のひどさはこの中国人の手紙が雄弁に物語っている。収容所の責任者であるこの人が言うには、そこの中学では5000人だった難民が8000人に増えたそうだ。

 金陵大学付属中学からの手紙   1938年2月5日  於南京
  拝啓 ラーベ様
 書面をもって報告させていただきます。保護を求めて戻ってくる難民の数は増える一方です。そして、家には長くはいられないと口々に訴えております。といいますのも、日本兵に絶え間なくひどい目にあわされるからです。娘を出せと言われ、言うことを聞かなければ殺すと脅迫されるのです。
 ラーベ様、あなたやあなたのご友人たちの他、私どもには誰一人頼れる人はありません。なにとぞ、ドイツ、アメリカ、日本の大使館と話し合ってくださるようお願いいたします。難民たちは、私のところに助けを求めてやってくるのですが、助けてやりたくとも私にはどうすることもできないのです。
 自治委員会には日本に対する影響力は全くありません。委員会から、難民を助けることのできるのは国際委員会だけだと言われました。自治委員会の妻たちでさえ、一般民と同じように強姦されているありさまなのです。それなのに、なぜ自治委員会が難民たちに自分の家に戻れと言えるのか、私には理解できません。安全区の外に出たら最後、身を守るすべがないことは、自治委員会にもよくわかっているのですから。
 難民たちがいかに悲惨な状況にあるか、それを言い表す言葉はとうてい見つかりません。

 なにとぞ中国をお見捨てにならぬよう、我々をお救い下さるよう、神に祈るばかりです。あなた様やそのご友人たちが手をさしのべてくださらなかったら、いったい誰が助けてくれると言うのでしょう。お願いです、どうか、ご友人たちと一緒に考えてください。
 敬愛するラーベ様、あなたは私たちの師です。これを書きながら、私は涙をおさえることができません。あなたに神のご加護がありますように。そして私たちのためにもお祈りくださいますよう。
                           敬具

                      D・G・ライムズ


 14時15分
 またもや中国機が上空を飛んでいる。とにかく飛行機に中国の印がついていることだけは確かだ。パイロットがどこの国の人間かはわからない。ロシア人でないといいが。ロシア人だとすると、ハーケンクロイツの旗を掲げてもあまり効き目はないだろうから。
 収容所を2月8日に閉鎖するという新たな指令が出た。大混乱になり、いっこうにおさまらない。これまでに、約三分の一が出て行った。残ったのは大半が女の人だ。ここから出て行きたくないのだ。今日、鼓楼病院の医師たちから連絡があった。脚気の患者が2人運ばれてきたという。米飯だけのかたよった食事では不思議はない。上海に「薬を送れ」と電報を打つことにした。
 我々ドイツ人は、ラジオのニュースで一様に大きなショックを受けている。国ではプロンベルグ、フリッチュ、そのほか数人の将官が辞任、ないし解任されたというではないか。外交政策を考慮して、という話だが、1日も早く詳しいことを知りたい。そうでなくてさえ、目の前に悲惨な出来事がごまんとあるというのに、この上、祖国の平和を憂えなければならないとは・・・・・・。勘弁してくれ!




「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店)より
2月5日 土曜日
 中国の暦によれば、昨日が立春。今日は日差しがとても暖かい。雪はすっかり融けてしまった。
 目が充血し、扁桃腺炎の気味があったので、終日ずっと部屋にいた。王さんが終日私の執務室にいた。客を迎えたり、行方不明の人たちを職業別に分類するためだ。可能であれば、その件で日高さんに会いたい。ほかの職員は、彼らがこの1週間のうち3日を費やして入手した資料の分類作業をしている。安全区国際委員会から救援が得られるかどうかは、私たちの勧告いかんで決まる。この大問題に対処するには、南京にいる練達の職員も何と無力なことだろう。午前中、私たち5人は3時間を費やして、国際委員会に提出する勧告を作成した。
 昨日自宅に帰った女性のうち4人が今朝戻ってきた。この4人の中の1人である40歳の女性は、城門から出る際に衛兵に3ドルを強奪された上、そこから少し先に行ったところで別の兵士によって退避壕へ連れて行かれた。彼女を拉致した兵士は、畑の向こうからやってくる女性(20歳)の姿を見ると彼女を解放した。危険を冒して自分の家ーというよりは家の残骸ーに帰るくらいなら、このキャンパスで餓死するほうがましだと、年齢の高い女性たちまでもが考えるのも不思議ではない。1週間以内に全員が安全区に戻ってくるだろう、と予言する人もいる。全く気の毒な女性たちだ。何たる窮地であろう。
 門衛でさえも気づかないうちに、かなりの数の若い女性たちがこっそり入ってきている。彼女たちは閉鎖された難民収容所からきたのだ。昨日私たちは、避難民がよその収容所からこの収容所へ殺到するのを食い止めようとした。
 今日キャンパスにはいまなお約4000人ー大多数は若い女性ーがいると思う。現在までに37件の出産と27件の死亡があったが、死亡者のうち5件は成人である。今日は文科棟の階下のホールから階上の教室に若い女性たちを移すつもりだ。そうすれば玄関ホールをきれいに片付けることができるし、ぜひそうする必要がある。階段下のガラスで囲まれた場所にはいまなお女性たちがいる。ガラスの家に住んでいる人たち、というわけだ。
 午後、警戒警報がとてもはっきり聞こえた。それは、どんなに多くのことを私に思い出させたことか。多分、中国軍の飛行機が句容へ向かっていたのだろう。



「Imagine9」【合同出版】より


MESSAGE(メッセージ)

環境が豊かで、平和で公正な世界。
日本の憲法9条は、そんな世界を願う私たちを励ましてくれます。

人々は、夢を見てきました。
人間の権利が守られ、植民地や奴隷制がなくなることを夢見て、一歩ずつ、一つずつ、実現してきました。

あともどりせず、前に進みましょう。
戦争のない世界へ。
すべての国が憲法9条をもつ世界へ。


ワンガリ・マータイ(ケニア/グリーンベルト運動代表、ノーベル平和賞受賞者)



第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


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