「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より
2月17日
郵便局長の李奇氏は日本人と一緒に郵便業務を再開しようとしている。だが、今までこの人が成功したためしはない。
ヴォートリンさんのお別れパーティーはとてもいい雰囲気だった。ベイツとフィッチの他、李奇、アリソン、ローゼンが招かれていた。ごちそうがたくさんあったが、いざ帰るときになってつらい思いをした。!
この大学にいる難民は女性ばかりで、今ではおよそ3000人ほどになっていた。その人たちが戸口に群がって、私たちを見殺しにしないで下さい、南京を離れないと約束してくださいと口々に訴えたのだ。帰ろうとするといっせいにひざまずき、泣き、文字通り私の服にしがみついて離れなかった。
ようやくのことで門までたどり着いたが、外に出た途端に門が閉められてしまったため、車を置いていかざるをえず、歩いて帰らなければならなかった。こんな風にいうと、随分大げさに聞こえるかもしれない。だが、ここで共にあの悲惨な状況を見た人なら、我々がこの人たちに与えたものがどれほど大きな意味を持つかがわかるだろう。これらはみな当たり前のことであって、英雄的な行為などではない。
「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店)より
2月17日 木曜日
今日は春だ。さかんに飛行機が飛んでいる。対空射撃の演習だ。あのおぞましい12月17日の記念日だ。
裏のキャンパスをきれいにしようと、李さんと一緒に再び巡回している。中央棟裏手の西南の隅はひどい状態だ。しかし、ソーンは、多くの収容所に比べればここのほうがきれいだ、と言っている。304号室では本格的な大掃除が行われた。女性たちは寝具をすべて外に出し、窓や床の掃除をした。私は、これが次々に広まることを期待している。
午後早くに将校2名と兵士1名が、多分視察のためにやってきた。来訪者にはすべて、陰険かつよこしまな動機があるのではないかとつい考えてしまう。
午前中、会計処理に2時間ほど費やした。・・・・・
現在の状況の下では決して容易なことではないが、午後、メリーと私はラーベ氏の送別ティーパーティーを催した。お客はラーベ氏、ローゼン博士、アリソン氏、ジョージ・フィッチ、リッチー氏、それにサールだった。程先生が私たちを手伝ってくれた。サラダを出し、、私たちとしては初めてのチョコレートの箱を開け、オレンジを食べた。ケーキはまずくはなかった。フルーツの代わりにエスターのひき肉を使って作ったフルーツケーキ風のものだ。南京では中国人の店はまだ一軒も開いていないので、自分の家か格別に親しい友人の家の、空になりかけている食料貯蔵庫の食品にメニューを合わせるようにしなければならない。
アリソン氏には日本人護衛兵がついていたので、私たちは、彼に先に退出するよう勧めた。というのも、程先生が聞いたところでは、女性の避難民たちがラーベ氏に会って、彼に是非一緒にいてくれるよう頼みたいと言っていたからだ。理科棟の前に来た時に私たちの目に入った光景は思いがけないものだった。そこには2000人ないし3000人の女性が待っていて、ラーベ氏が近づくと、全員がひざまずき、涙を流して哀願し始めた。彼が二言三言しゃべったあと、メリーが彼を裏道から立ち去らせた。私は、ローゼン博士とリッチー氏が退出できるように女性たちを立ち去らせようとしたが、それは難儀なことだった。メリーが再び彼女たちを外に連れ出したが、一方、私のほうは彼女たちの注意をそらし、中庭の向こう側に彼女たちを誘導しようとした。かなりの時間が経ってから私たちはやっと車を校門の外に出すことができた。本来なら、そのころにはローゼン博士とリッチー氏は、彼らの家にかなり近いところまで行っていたに違いない。
リッチー氏は明日車で上海に行く。彼の報告では、多分、中国側の管理の下に郵便局がまもなく開設されるそうだ。
「Imagine9」【合同出版】より
9条をつかって、
戦争のない世界をつくる。
中米の国・コスタリカも平和憲法をもっています。コスタリカは1949年、軍隊を廃止しました。
軍隊の廃止によって、国は教育や医療などにお金を使うことができるようになりました。また、軍隊がないコスタリカに攻め入ろうと考える国はありません。
ところが、2003年に、アメリカがイラクに対する戦争を始めると、コスタリカ政府はこれを「支持する」と表明しました。これに怒った大学生ロベルト・サモラさんは、裁判所に政府を訴えました。「イラクへの戦争を支持するなんて、平和憲法への違反だ!」
裁判所はロベルトさんの訴えを認めました。そしてコスタリカ政府は、イラク戦争への支持を取り下げました。ロベルトさんは日本に来て言いました。
「憲法はただ単に守ればよいものではありません。平和憲法は人々のもの。人々が使うためにあるのです」
ほかにも世界の多くの国が平和憲法をもっています。イタリアや韓国の憲法は侵略戦争をしないと定めています。フィリピンは核兵器をもたないという憲法をもっています。
スイス、オーストリア、アイルランドなどの国々は、憲法で軍事対立のどちら側にも味方しないという中立をうたっています。
こうした平和憲法を私たちが活用し、世界にゆきわたらせていけば、戦争を起こさない世界をつくる事ができます。「イマジン 9」は、そのような世界のつくり方を、9通りにわたって、皆さんと考えたいと思います。
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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