日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部 難波健治
みなさんにぜひ、関心を寄せていただきたいことがあります。
被爆地広島で起きていることについてです。
いま、私たちが直面しているのは、今年の8 - 6平和記念式典が営まれる前後4時間にわたって、 広島平和記念公園の全域を入園規制しようとしていることです。
この規制には、何の法的根拠もないことは、市当局が明言しています。
では、なぜ、そんな規制を広島市が打ち出したのか。そのことをお伝えしたいのです。
本題に入る前に、恐縮ですが、ここ1〜2年の 間に、広島でどんなことが続いているか、少し説明させてください。
その流れを踏まえていただいた方が、いま広島で起きていることの「本質」をより理解していただけると思うからです。
広島では昨年5月、先進国首脳会議(G7)が開かれました。
その初日(5月17日)、核抑止力を肯定する「広島ビジョン」なるものが発表され、内外から大きな批判が巻き起こったのは、みなさんご存知の通りです。
このG7広島サミットの開催に相前後して、広島では「平和」に逆行するようなさまざまな出来事が、現在に至るまで続いているのです。
まず昨年初頭に、広島市が作成する平和教育の副教材から、漫画家中沢啓治さんの『はだしのゲン』が削除されたことがわかりました。
続いて『はだしのゲン』だけでなく、第五福竜丸事件の記述も削除されていたことがわかりました。
そして、これらの削除と入れ替えるようにして、「原爆を投下した米国を恨むのではなく、許すことが世界の平和につながる」と受け止められるような亡き被爆者(故人)の語りが、米国在住の娘さんを通して掲載され、紹介ました。
それだけではありません。
サミット後の6月には、松井一実・広島市長が 東京にある在日米国大使館に出向いて、パールハーバー(真珠湾)と広島平和公園との「姉妹友好協定」を結んだのです。
事実上、議会に諮ることも、市民に説明することもなく、突然の「友好」協定締結でした。
市民による情報公開請求によって、この協定締結は、サミット直前に米国側から持ち込まれ、当初は、「サミット期間中に平和記念資料館(原爆資料館)で日米双方のトップクラスによって調印しよう」と要請したものでした。
「これはオバマ大統 領が広島を訪問(2016年5月)した時からの懸案(約束)である」と、協定締結は当然、と言わんばかりの姿勢でもありました。
米国軍有数の基地があるハールハーバーは、太平 洋戦争勃発の地でもあり、広島は米国に言わせると「その戦争を終結に至らせた」世界最初の戦争被爆地です。
この動きも広島市民にとっては、寝耳に水の驚きをもって迎えられ、市民団体はさっそく真珠湾に 調査団を送り、「真珠湾にある米国立公園なるもの」の実態を調べました。
「軍基地の中にある、まさに軍事施設。核兵器廃絶と世界平和の実現を願う広島平和公園との友好協定締結などありえない話だ」というのが、その結論です。
そして、今年の8・6平和記念式典です。
広島市は、ロシアとベラルーシを招待しない (2022年から続いている)一方で、ガザを軍事侵攻して住民の大虐殺を繰り返しているイスラエルには、式典の招待状を送りました。
イスラエルの代表(駐日大使?)は式典に参列する、と伝えられています。
その式典が開催される時間帯(8時〜同50分ごろ)の前後、午前5時から9時までの4時間はそれまでに公園内にいた人たちに公園内への退去を求めたうえで、「プラカード•ビラ•のぼり•横断 幕等の持ち込み禁止」「ゼッケン•たすき•はちま き等の着用禁止」などを含む規制を実施し、公園出入口 6力所で手荷物検査を実施。
これら禁止措置 に従わない場合は、公園外への退去を命令することがある」というのです。
詳しくは、紹介できませんが、今年のこの規制の 実施の背後には、昨年の8 • 6当日の朝に起きた、原爆ドーム前での「衝突事件」なるものを理由にした警察当局との連携があるものと考えられます。
結果、8月6日8時15分に、被爆地のシンボル 原爆ドームを含む平和公園からの、市民たちによる「NO WAR」「NO NUKES」の叫びをいっさい 封じようとしているのです。
私たちJCJ広島支部は、この7月21日、広島市による「表現の自由」の抑圧(法的根拠すらない公園の利用規制)の実情を広く市民に知ってもらうための集会を開きます。
この集いには、メインゲストとして北海道放送報道部デスクの山崎裕侍さんに広島まで来ていただ き、5年前に起きた「ヤジと民主主義」事件が明らかにしたものについて語っていただきます。
オンライン参加も可能です。
全国からも多くの方々が、「いま広島市で起きていること」に関心をお寄せくださるよう、心からお願いする次第です。よろしくお願いします。
<追伸>
さらに詳しくは、こちらをご覧くださるよう、お願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関誌 『ジャーナリスト』に寄稿しました。
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