2019年8月8日木曜日

米の原爆傷害調査委 協力的な被爆者に優先的治療の便宜か


2019  所沢市 平和祈念資料展


米の原爆傷害調査委 協力的な被爆者に優先的治療の便宜か
2019年8月8日 4時45分

広島と長崎に投下された原爆の影響を調べる目的でアメリカが戦後設立した組織が、反米・反核運動が日本で高まる中、調査に協力的な被爆者が優先的に治療を受けられるよう便宜を図っていたことを示す文書が、新たに見つかりました。専門家は「アメリカの対日政策を検証するうえで貴重な文書で、被爆者に対する説明責任を果たすためにも、こうした資料を広く公開する必要がある」と話しています。

広島・長崎に原爆が投下された2年後の1947年、アメリカは、放射線が人体に及ぼす影響を調べる目的でABCC=原爆傷害調査委員会を設立しましたが、原則として治療を行わなかったことに、被爆者から批判が集まりました。

今回、アメリカ科学アカデミーで新たに見つかった文書によりますと、原爆投下11年後の1956年、当時、広島で活動していた「原爆被害者の会本部」という団体の代表が、東西冷戦の中で親米・反共主義を基本とするみずからの立場や調査への協力を伝えたうえで、自分たちの団体のメンバーに独占的に治療を行うよう、ABCC側に手紙で働きかけていました。

これに対し、ABCC側は優先的に治療を受けられるよう、日本側の機関と連携し、実際に便宜を図っているとしています。

当時は、アメリカの水爆実験で、日本の漁船「第五福竜丸」の乗組員が、いわゆる死の灰を浴びて被爆し、原水爆禁止運動が高まっていました。

便宜の必要性についてABCC側は「限定的な治療を提供すれば、被爆者と医療従事者は感謝と友好の念を示すでしょう」と結んでいます。

ABCCの歴史に詳しい名古屋大学大学院の高橋博子研究員は、「第五福竜丸事件のあと、アメリカは反米・反核感情が日本で広がることを恐れ、ABCCも何らかの医療行為をする方針になっていくが、自分たちのほうを向いている人には治療をするという露骨な態度、アメリカの科学者の本音が大変よく見える」としたうえで、「当時を検証するうえで貴重な文書で、被爆者に対する説明責任を果たすために、こうした資料の公開を進める必要がある」と話しています。

ABCC=原爆傷害調査委員会とは
ABCC=原爆傷害調査委員会は、広島・長崎に投下された原爆が人体にもたらす影響について長期的な調査を行うため、アメリカのトルーマン大統領が出した大統領令によって、1947年に設立された組織で、1975年に発足した日米が共同で運営する放射線影響研究所の前身に当たります。

ABCCは、放射線の身体的影響や遺伝的影響を調べるために、自治体や大学、地元の医療関係者などの協力も得ながら、被爆者や新生児を対象に広範な調査を行い、集められたデータは冷戦下のアメリカの核戦略にも利用されました。

しかし、被爆者を研究対象にする一方で、ほとんど治療を行わなかったため、「調査すれども治療せず」と、被爆者から批判を受けました。

こうしたABCCの方針に対する批判は、広島出身の漫画家、故・中沢啓治さんがみずからの被爆体験をもとに描いた漫画、「はだしのゲン」の中にも見られます。
放射線影響研究所理事長「米に引き継ぎの考えなかったのでは」
ABCCから研究活動を引き継いだ日米共同運営の組織、放射線影響研究所の丹羽太貫理事長は、NHKの取材に対して、「今回の文書は初めて見た。こういう過去のこともわれわれは知っておく必要があり、大事なことだと思うが、放影研にはABCC時代の組織運営に関する文書は残されていない。おそらくアメリカ側には、そうした文書を日米で共有したり、放影研に引き継いだりする考えはなかったのではないか」と話しています。



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