2018年4月21日土曜日

H・アスペルガー医師、ナチスに「積極的に協力」か 研究



【AFP=時事】アスペルガー症候群の研究で知られるオーストリア人小児科医のハンス・アスペルガー(Hans Asperger)医師が、ナチス・ドイツ(Nazi)の安楽死プログラムに「積極的に協力」していたことが明らかになったとする研究論文が19日、発表された。

 オーストリア・ウィーン医科大学(Medical University of Vienna)の医史学者、ヘルビヒ・チェフ(Herwig Czech)氏は論文で「アスペルガーはナチス政権に取り入り、忠誠を誓う代わりに職の機会を得た」としている。
 チェフ氏によると、アスペルガー医師は、強制的な不妊手術を含む民族の浄化政策を公に正当化していたとされ、その時々でナチスの子どもの安楽死プログラムに「積極的に協力していた」という。

 専門誌「Molecular Autism」に掲載された論文では、アスペルガー医師がナチスそのものには入党しなかったものの複数の関連組織に参加していたことが指摘された。

 今回の研究でチェフ氏は、現代の文献やこれまで未調査だったアスペルガー医師の私的ファイルや患者の記録を含む膨大な資料を見直した。そのうちの一つである1940年のナチスの資料には、アスペルガー医師が「人種と浄化法という問題で国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の考えに一致していた」との記述があったという。

 また、同医師は各講演でナチス医療の理念に忠誠を誓い、1938年にオーストリアがドイツ第三帝国(Third Reich)に「併合」されてからは、診断書に「Heil Hitler(ヒトラー万歳)」とサインしていた。

 チェフ氏によると、アスペルガー医師は2歳と5歳の少女をウィーンの精神病院内にある悪名高き「シュピーゲルグルント(Spiegelgrund)」の施設に移すよう勧めたという。そこでは「遺伝的価値」と「民族的純粋さ」に欠けるとされた800人近くの子どもたちが死亡しており、その多くは殺されていた。2人もここで命を落としているが、その原因は「肺炎」と公にはされている。

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 またアスペルガー医師は別の病院の小児病棟の約200人の運命の決定する委員会にも所属していた。ここでは35人が「教育不可能」とされ、後に命を落としている。

 AFPの取材にEメールで応じたチェフ氏は、今回見つかった証拠は、同医師が「子どもたちの診断を飾リ立てることで、彼らを保護しようとしていたという認識が誤りだったこと」を示していると説明した。

■死後の承認
 アスペルガー医師の業績が認められ、その名にちなんでアスペルガー症候群との名称がつけられたのは、1980年の彼の死後だった。

 論文掲載誌の共同編集主幹で認知神経科学者であるサイモン・バロンコーエン(Simon Baron-Cohen)氏は、同論文が物議を醸すものであると認識しているとしたうえで、「われわれが掲載に値すると思ったのは、小児学および児童精神医学に長きにわたって価値ある貢献をしてきたとされる医師が、ナチスの嫌悪すべき優生学と安楽死政策を積極的に支援していた罪があるという真実を暴露しているからだ」と語った。

 英国自閉症協会(National Autistic Society)自閉症センターのキャロル・ポベイ(Carol Povey)氏も、同論文は全英の70万人の自閉症患者やその家族、特にアスペルガーの人の間に大きな議論を呼ぶものだとしている。

 他方で米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)欧州研究所の上級研究員エディス・シェファー(Edith Sheffer)氏は、用語としての「アスペルガー」の使用を止めるよう呼びかけている。

「Asperger's Children: The Origins of Autism in Nazi Vienna(アスペルガーの子どもたち:ウィーンのナチスの自閉症の起源)」の著者である同氏は、「疾患や障害に人の名をつけるのは、その人の功績を認め称賛するためであって、アスペルガーはそのどちらにも値しない」と語った。【翻訳編集】 AFPBB News


日本では
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優生保護法
優生保護法(ゆうせいほごほう)とは1948年から1996年まで存在した、優生学的断種手術、中絶、避妊を合法化した法律。1996年に優生学や断種に関する条項が削除され、現在、母体保護法になっている。そのため、現在では旧優生保護法とも表記される。


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